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アラカンからの挑戦

これぞ舞台!噂の男

我ながら情けない。なかなかこの舞台の講評が書けませんでした。感想もどうしていいか…。


チケット販売からことごとく漏れてしまい、やっとゲットしたチケット。ああ、これで橋本じゅんさんに会える〜〜〜〜〜っとルンルンで出かけた渋谷パルコ。それは8月26日土曜日のこと。


2時間半ぶっとうしのストレートプレイ。出演者7人が入れ替わり立ち替わり、話も現在と過去が交錯しながら進む。すごく悪意に満ちてるというか、ハッピーな気分はゼロ。いやーな男達のいやーな話。サスペンスでもなく謎解きでもない話なのに、最後の最後で「ああ、そういうことか」と話がわかるわけで。


舞台設定はパンフレットによれば、<<時は現在。
場所は大阪にある宝田興業の持ち小屋、昭和の戦後に建てられた、宝田グランド劇場。その舞台袖、地下にある『ボイラー室』と呼ばれる一室。
そこを訪れる、芸人たちとそれをとりまく人々。>>


以下、ネタバレあるので畳みます。



観た直後はとてもじゃないけど、飽和状態で感想も書けませんでした。でもこのままじゃ忘れちゃうから書いとこうって、今ごろ覚書。五列目の左サイドで観劇できたので、オペラグラスなしで表情までばっちり。


いやはや脱帽ですわ。じゅんさんの芝居には打ち抜かれました、私。主要な登場人物を演じる五人の方々全てスバラシイのですけど、さらにも増して、どこまでも嫌な男であるじゅんさんが際立ってた。


思わず「背中がかゆいのですわ」と言うじゅんさんの背中をかいてあげたくなりました(笑)最終的にあそこまで嫌なヤツとは思ってなかったもんで(^^;;; まあよくしゃべるわしゃべるわ。漫才師だから当然なんだけども、次から次へとよくしゃべる。セリフを持つじゅんさんは水を得た魚ですねー。でもセリフのないじゅんさんも目が離せませんけど。


相方の橋本さとしさんとの雰囲気もばっちりで、性格の違いもすごく浮き彫りになっていて、芸人さん達の苦労というか、浮世離れした感覚というか、そんなものも垣間見えてきて、怖いことは怖い話でしたね。ま、最後に人がばったばったと死んでしまうような現実はないのだから、これはお芝居ですけども。


堺雅人さん、本当にご苦労様でした。あんなにひどい目に遭わされて、なんと言っていいか、気の毒で。あの手の場面は映画でも苦手なのですが、実際に見るのは余計辛かったです。早くやめてくれないかなあって思いました。橋本さとしさんの動物虐待もしかり。きついものがありました、ほんと。


八嶋智人さんはテレビで拝見した人そのもので、嫌なヤツにはもってこいです。意外性はありません。見た目もしゃべりかたもシニカルでコミカルだし、嫌なオーラぷんぷんの役割でした。


山内圭哉さんは一番衣装をとっかえひっかえしていたので、どれが素顔なのかよくわからなかったのですけど、声がいい人でした。売り出し中のピン芸人らしく、今を花と過ごしている雰囲気が伝わってきました。しょーもない人間ではありますけど、嫌なヤツという感じではなかったですね。


橋本さとしさん、背が高くてかっこいいです。今度レミゼジャン・バルジャンをなさるそうで、それも見てみたいかなあと思わせるものがありました。上記の動物虐待を除いては、いろんなものに足かせされているように見えつつ、根っからの悪者でもなさそうな雰囲気を持ちつつ、本当は全てを蹴散らして自分の王道を行きたいのだけど、そんな王道は最初からないかもしれないと感じつつ、揺れながら幽霊をやっている感じ(笑)幽霊のくせに元相棒の本心や本性を見抜くことができない、実は一番間抜けな男かもしれないですね。


改めて堺雅人さん。本当に声がキレイで、艶やかですね。線も細くて、ゲイとしての役柄でしたが、ぴったりでした。私は新撰組を見るまで知らなかったので、雅人歴は浅いですが、なんとも言えないあの笑顔が今回も役柄の芯になっていました。あの穏やかな微笑み、薄ら笑いをたたえてのセリフ回しはぞっとするものがあります。この目で確認できて嬉しかったです(笑)


じゅんさんは登場するまでちょっと時間があったのですけど、出てきてからはもう舞台を包み込んでしまいました。猛々しく人をいじめるじゅんさんと、頭のねじが1本外れておかしくなってしまった老人のようなじゅんさんを使い分け、どんでんがえしのようなラストまで引っ張って行くわけで…。いやあ、すごいわ、すごい。嫌なヤツとしてほんとうに嫌だ。


嫌な男達ってどうしようもないです。大方の感想通り、どっこにも救いのない舞台でした。