心身ともに《豊》な《未來》を!

アラカンからの挑戦

 歌舞伎の千秋楽 十八番の芸はやっぱりすごい!


娘がどうしてもこの出し物だけは見た方がいいとお勧めの『女殺油地獄』。そりゃあ見たいに決まってる。未來さんの「ネジと紙幣」の原作だもんねえ。折しもCS放送では五社監督の映画もやっていたので録画してある。


まさか朝から並んで当日の一幕席を買う気力はないし、オケピにいけなくなった人のチケットが出回らないかチェックチェック。案外あるもんです。娘とは別々の席になったけど、どちらも一応一等席。桟敷席とは比較のしようがないけど(^.^;)、それでも端から端までよく見渡せる2階の5列目でした。娘は1階の13列目。


片岡仁左衛門は現在65歳だそう。この役をぴっかぴかの二十歳から演じている、十八番中の十八番だ。そして今回を最後に演じるのを止めるとも聞いた。確かに舞台を見たら65歳でこの役をやっていることが不思議なくらいの激しい動きがたっぷりある。でもそこに少しも年齢を感じさせないのが凄い!!油ぎとぎとでひっくりかえって着物がはだけて足がもう全部あらわになっちゃっても、若者であることを裏切らない体作り。すごいな、本当に。狂気がみなぎる!!


息子の孝太郎が殺されるお吉を演じ、孫の千の助はその娘を。三代で演じる『女殺油地獄』だ。


芝居を見終わってしばらくドキドキが収まらなくて、しばしぼーぜんとしてしまうという体験はそう多くはない。近いところで『カリギュラ』がそう。『バットボーイ(初演)』もそうだった。そしてこの仁左衛門の与兵衛にはまさにギューっと心臓を捕まれた気がした。ぎゅうっとだ。


自分の気持ちを素直に表せない若者、与兵衛。根っからの悪者というわけではないのに嘘を平気でついてしまう与兵衛。親はその性根を直したい一心であの手、この手を考えている。しかし親には本当に愛されている与兵衛。憎めない男なのだ。しかし親とケンカをし、勘当されてしまう。自分で窮地に陥って、自分の狂気に飲まれていくその移行シーンは圧巻と言うしかない。こんなすごいの見たことないかも。


あああ、もっと何回も見ておきたかったな。義母はその昔、まだぴっかぴかの若者の仁左衛門の与兵衛と玉三郎のお吉を見て、あまりの綺麗さに動けなかったそうだ。あんなに綺麗なものは見たことがなかったと言っていた。この世のものじゃないと。そうなんだろうなあ、まさに当たり役だもんね。


なんか『ネジと紙幣』の行人、未來さんはとっても合っているかもしれないな、と思った。当たり役かもな〜って漠然と。見終わったら立ち上がれない程の舞台を見たい。お願いします。